日立市の地域課題

日立市の地域課題 - 茨城県北の人事部

消滅可能性⾃治体というワードをご存知でしょうか。

⺠間の有識者でつくる「⼈⼝戦略会議」が、⽇本の地域別将来推計⼈⼝(2023年推計)に基づき、⼈⼝から⾒た全国の地⽅⾃治体の「持続可能性」について分析を⾏い、2024年4⽉に公開されました。

その数は、全体の4割にあたる744⾃治体と、恐々とする結果となっております。
全国的かつ⻑期的に⼈⼝が減少するという⽇本史上で初めて経験するとても⼤きな課題。

茨城の県北地域もその課題先進地の1つ。
⽇⽴市編・常陸太⽥市編・⼤⼦町編の3回に分け、各地域の現状や課題、そのために何に注⼒していくのか(地域ごとの主に産業⾯の⽅針)を紹介していきます。

本記事は、⽇⽴市編。
経験と機会を活かして、こんなことができるんじゃないか。
そういったことを少しでも感じ取っていただけたら幸いです。

Contents

⽇⽴市の現状

茨城県北部の中核都市で、⽅都市の街並みと⾃然豊かなエリアがあり、海・⼭の豊かな恵みを享受しながらも東京圏に近い。
(株)⽇⽴製作所を始めとする多くの⼯場が⽴地し、国内有数の⼯業都市としても知られている⾃治体です。

2010年の⼈⼝は192,493⼈(⾼齢化率25.2%)、2020年には173,750⼈(⾼齢化率32.6%)、その後は10年毎に約23,000⼈ほど減少すると推計(国⽴社会保障・⼈⼝問題研究所による推計)されており、事態の深刻さは時間の経過と共に急増しています。

 

産業の特徴

前出の通り、国内有数の⼯業都市として発展してきたこともあり、製造業が盛んな地域です。
ものづくりのまちとして100年を超える歴史を有する⽇⽴市には、⼤企業を中⼼に多くの中⼩企業が集積しており、茨城県内で2番⽬に多い事業所数(従業員4⼈以上の製造業)となっています。
専⾨的・技術的職業の従事者も県内で3番⽬に多く、産業⾼度化を⽀える環境や⼈材を有しています。

産業分類別の就業者数を⾒ても全国の産業構成と⽐べ、第⼆次産業の割合が⾼いこと。
(2020年の割合 第⼀次産業:1.1% 第⼆次産業:34.5% 第三次産業64.3%)

昼夜間の⼈⼝⽐率が106.3%と、通勤等により市外に流出する⼈⼝よりも流⼊する⼈⼝が多い流⼊超過の状況となっていること。
産業別付加価値額も第⼆次産業が4割以上と割合が⾼いことも特徴となっています。

なお、企業城下町と呼ばれる他地域と同様に、特定企業を頂点とした⽣産ピラミッド構造で、製造コストの低減化・⽣産規模の拡⼤・⽣産調整といった機能を有しており、機械加⼯や製⽸・板⾦、組⽴、めっきなどのものづくりの要素技術を持つ地域中⼩企業に外注することで成⽴しています。

また、市域南部の久慈川河⼝付近には、茨城港⽇⽴港区があり、北関東における物流拠点として、国内外を結ぶ⽞関⼝になっています。

完成⾃動⾞の物流拠点としての機能に加え、エネルギー供給拠点として⽇⽴LNG基地を有しており、多様な物流拠点の機能にも対応できるよう、更なる活⽤を⽬指しています。

 

⽇⽴市の商業
・事業所数:1,256事業所(卸売業含む)
・従業者数:10,400⼈
・年間商品販売額:約3,176億円(令和3年経済センサス)

⼯業
・主な業種:電気機械、はん⽤機械、⾮鉄⾦属、電⼦部品・デバイスなどの製造業
・事業所数:276事業所(従業者4⼈以上)
・従業者数:21,039⼈
・製造品出荷額等:約1兆2,094億円(令和3年経済センサス)

 

⽇⽴市の課題

基幹産業となる⼯業において、産業構造の変化やグローバル化などに対応した市内⼤企業の再編・デジタル化・ゼロカーボンの実現に向けた対応など、ものづくりを⽀える市内中⼩企業を取り巻く環境の厳しさが増しています。

なお、市内には賃加⼯を中⼼とした、いわゆる下請け型の中⼩企業が約8割を占めていますが、近年は、賃加⼯型から提案型への事業形態の転換が増加傾向にあり、販路開拓に向けた取り組みが進められています。

⼀⽅で、新たな形態で事業を推進できる⼈材やノウハウ不⾜への懸念も挙げられます。
これまでに培われた優れた⽣産技術を持つ事業所と、その技術や製品を求める地域外の新たなクライアントなどを繋ぐ⽀援者の出現によって地域での成功事例が増え、好循環が⽣まれる可能性も⼤いに感じられます。

商業においては、近隣の⼤型商業施設への消費の流出やECなどにより、事業所数・販売額ともに減少傾向にあり、商店街の機能維持や魅⼒向上・賑わいの創出・地域の特性を活かした魅⼒ある商業施設の誘致・観光業の強化など商業全体の振興が求められています。

例えば商店街では、担い⼿不⾜や資⾦不⾜によって共同施設の維持・イベント等のにぎわいづくりも困難な状況となっています。
経営者の⾼齢化もあり、今後さらなる事業所数の減少も予想されます。
特にコロナ禍で中⼼市街地への⼈出が減少し、街のにぎわいが減るとともに商店も⼤きな打撃を受けました。
中⼼市街地の商店数の減少は空き店舗の増加だけでなく、店舗以外の⼟地利⽤への転⽤へとつながり、結果として商店街の魅⼒が損なわれてしまいます。

農林⽔産業においては、⾼齢化などによる担い⼿不⾜の傾向にあります。
後継者の確保・育成に加え、商品価値の⾼い農⽔産物の⽣産や販路拡⼤・収益の多⾓化など経営の安定化への積極的な⽀援が求められています。

 

⽇⽴市の今後の⽅針

⽇⽴市がこれから何に注⼒していくのか。
市役所が独⾃で⾏うこともありますが、地域内外の⽅々と連携して⾏うことも多いです。
その際に、スキルがあり、かつ、地域への想いを持ったプレイヤーが少ないのも地域課題の1つ。
市総合計画の産業に関する部分からピックアップしてご紹介します。

 

【経済的社会的環境の変化に対応した事業展開の促進】
・中⼩企業を取り巻く経営環境の急速な変化に対応したカーボンニュートラルやDX推進への取り組みなど、新規市場への挑戦に向けた取り組みを後押しします。

・新たなビジネスモデルの構築や、新商品・新サービスの開発などによる新しいニーズに対応した仕事の創出を促進し、地域産業の活性化を図ります。

(主な事業)
1、脱炭素経営促進事業
2、中⼩企業デジタルトランスフォーメーション促進事業
3、外国⼈中核⼈材活⽤⽀援事業

 

【中⼩企業の持続可能な経営基盤の確⽴・強化への⽀援】
・経営者の世代交代などによる事業承継や、地域に根付く⾼度なものづくり技能の継承など、地域のものづくり産業の継続的な発展に資する中⼩企業の取り組みに対する⽀援の充実を図ります。

・ものづくり産業の持続的な発展に向けて、⼈材育成や販路開拓などの経営基盤の強化を進める取り組みを⽀援します。

(主な事業)
1、副業・兼業プロ⼈材活⽤⽀援事業
2、中⼩企業研修訓練⽀援事業
3、中⼩企業事業継続⼒強化⽀援事業
4、中⼩企業事業承継⽀援事業
5、専⾨展⽰会出店⽀援事業
6、海外販路開拓⽀援事業

 

【⽇⽴駅前地区の再活性化と買い物環境の維持】
⽇⽴駅前地区における買い物環境の確保や、賑わいの創出に向けた各種施策を実施するとともに、市⺠・企業・周辺施設・商店街等との連携による、まちの活性化を図ります。

(主な事業)
1、⽇⽴駅前地区再活性化事業
2、商店街街並み再整備事業

 

【持続可能な商店街機能の確保・⽀援】
・商店街の魅⼒向上として、街並みの再整備や⽼朽化した街路灯の保全、遊休地の活⽤の検討など既存の商店街から脱却し、来街を促すための新たな魅⼒づくりを⽬指します。

・空き店舗活⽤⽀援の更なる拡充や、後継者のいない飲⾷店等を⽀援し、持続可能な商店街機能の確保を⽬指します。

(主な事業)
1、移住・開業⽀援事業
2、ひたちの味の伝承事業
3、商店街街並み再整備事業
4、まちなか空き店舗活⽤事業
5、ひたち未来座(商業分野での若⼿経営塾)事業
6、商店街にぎわい創出事業

 

【意欲ある⽣産者への⽀援と後継⼈材の確保】
・新たな担い⼿の確保や意欲ある農業者への⽣産⽀援により、儲かる農業を実現させるための農業振興施策を計画的に⾏います。

・本市特有の地域資源を活かした農業や⾃然体験プログラムの充実を図るほか、地元農産物を活⽤した商品開発と更なる販路拡⼤に向けた取り組みを進めます。

1、特産農産物振興事業
2、農業者⽀援事業
3、農業振興事業
4、中⾥・たかはら地区活性化推進事業

 

【⾼品質で魅⼒的な⽔産物の共有】
・地元⽔産物の普及促進を図るため、消費者ニーズに対応した⽔産加⼯品の開発や⽣産・加⼯、流通・販売の充実に向けた取り組みの⽀援のほか、市内外のイベント等に参加し、魅⼒発信の取り組みを推進します。

・魅⼒的な⽔産物を供給するため、⽔産物と異業種とのマッチングなど、産業間が連携した販路開拓等の新たな取り組みを推進します。

(主な取り組み)
1、⽔産物流通・加⼯基盤強化事業

 

【地域資源の磨き上げによる観光誘客の促進】
新規来訪者を獲得するため、既存イベントの磨き上げに取り組むほか、海、⼭などの豊かな⾃然や、産業資産などを活かしたニューツーリズムの造成に取り組みます。

(主な取り組み)
1、シーサイドツーリズム推進事業
2、中⾥地区地域活性化検討事業

まとめ(3地域共通)

3地域で計48社の中⼩企業の経営者に「経営改⾰のための中⻑期的施策の実⾏状況について」経営者にヒアリングをした結果、⽬先の業務に追われる経営者も多く、中⻑期の施策を考えられていない、あるいは着⼿できていない企業が8割ほどありました。

「課題の整理や新たな⼿段に着⼿できていない」「現状に対する施策が⾒当たらない」「施策はあるが⾏動ができていない」といった状況ではあるものの、危機感や中⻑期に何かやりたいという意思はあります。

もちろん、すでに着⼿されている・着⼿し始めた経営者もいます。
そんな地域企業が「これから何をするのか」「どんな課題を抱えているのか」に興味がある⽅、フリーランス・副業・兼業などで地域と繋がってみたい⽅は、ぜひこちらのサイトでチェックしてみてください。

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