消滅可能性⾃治体というワードをご存知でしょうか。⺠間の有識者でつくる「⼈⼝戦略会議」が、⽇本の地域別将来推計⼈⼝(2023年推計)に基づき、⼈⼝から⾒た全国の地⽅⾃治体の「持続可能性」について分析を⾏い、2024年4⽉に公開されました。
その数は、全体の4割にあたる744⾃治体と、恐々とする結果となっております。全国的かつ⻑期的に⼈⼝が減少するという⽇本史上で初めて経験するとても⼤きな課題です。茨城の県北地域もその課題先進地の1つです。
常陸太⽥市編・⼤⼦町編・⽇⽴市編の3回に分け、各地域の現状や課題、そのために何に注⼒していくのか(地域ごとの主に産業⾯の⽅針)を紹介していきます。
本記事は、常陸太⽥市編です。経験と機会を活かして、こんなことができるんじゃないか。そういったことを少しでも感じ取っていただけたら幸いです。
Contents
常陸太⽥市の現状
2004年に1市1町2村が合併し、県内で最も⾯積の広い⾃治体です。
2005年の⼈⼝は59,802⼈(⾼齢化率26.6%)、2017年には50,728⼈(⾼齢化率36.0%)と減少しており、その後も10年毎に約8000⼈ずつ減少すると推計されています(国⽴社会保障・⼈⼝問題研究所による推計)。事態の深刻さは時間の経過と共に急増しています。
産業の特徴
東隣に位置する⽇⽴市の株式会社⽇⽴製作所に関連する製造業をはじめ、南側の広⼤な平野部や北側の中⼭間部の気候や⼟壌を活かした農林業も盛んな地域です。(2020年の就業者の割合:第⼀次産業7.7%、第⼆次産業26.5%、第三次産業63.3%)
なお、観光においては年間約140万⼈(2023年)もの観光者が訪れ、アウトドアスポーツや体験など、地域の特性を活かした各種ツーリズムの推進など魅力ある観光地域づくりを目指しています。
また、住宅地の規模と比較して、買い物をする場や働く場が不足しており、市⺠へのアンケート調査では、特に未来を担う中高生が問題意識を持っています。商業・業務などの産業振興をより一層図る必要があり、中心市街地においては商業・業務⽤地の整備が進み、商業施設などが続々と進出されています。
常陸太⽥市の商業(令和3年経済センサス)
- 主な⽴地:常陸太⽥駅周辺の中⼼市街地、街道沿い、町内各地域の商店等
- 事業所数:350事業所(卸売業含む)
- 従業者数:2,443⼈
- 年間商品販売額:約431億円
⼯業(令和3年経済センサス)
- 主な業種:⾷品、電気機械器具、⽊材、⾦属製品、⽣産⽤機械器具などの製造業
- 事業所数:89事業所(従業者4⼈以上)、製造業全体で189事業所
- 従業者数:2,069⼈
- 製造品出荷額等:約384億円
常陸太⽥市の課題


全国の多くの地域と同様に、⼈⼝の減少や⾼齢化が起因し、課題となって現れています。就業⼈⼝は2005年から2015年の10年間で約5,000⼈が減少し、事業所数も減少傾向にあります。
⼯業では、2023年時点で89事業所(従業者4⼈以上)があり、2005年から2023年までの18年間で66の事業所(約57%)が減少しています。なお、従業者30⼈以上の事業所は2005年に⽐べて4事業所が増え、19事業所(2023年5⽉時点)となっています。(30〜49⼈:8事業所、50〜99⼈:10事業所、100〜199⼈:1事業所)
また、従業者0⼈〜19⼈の事業所が、製造業全体の約86%(162事業所)を占めており、将来的に後継者や⼈⼿不⾜による廃業が予想されます。
これまでにヒアリングを⾏った事業者からも、⼈材不⾜に課題があるとの声が多く聞かれます。中には、⼈事評価制度の再構築によって社員のモチベーションアップや職場環境の改善を目指し、複業の人材と協働して360度評価を試みたり、採⽤⽅法を見直した事業者もいます。
商業においても、収益や認知度の向上に関するノウハウ・適した⼈材が社内にいないといった課題が上がっています。
農業では、特に兼業農家の減少が顕著となっており、⾼齢化等による後継者不⾜が⼤きな課題となっています。これに伴い、有害⿃獣による被害や耕作放棄地の増加といった課題も発⽣しています。
また、農業に限らず、繁忙期に⼿が⾜りず、その期間に⼿伝ってほしいと考える農家さんも少なくありません。
観光では、2019年に約184万⼈(前年⽐119%)の観光者数がありましたが、新型コロナの流⾏により2020年には約70万⼈に激減しました。2023年には約140万⼈まで回復してきています。
都市計画区域外の⾯積が都市計画区域の約5倍と⼤幅に増えた常陸太⽥市では、都市計画区域において市域全体への都市サービス提供機能を強化し、商業サービスや⾏政サービスの拠点エリアを広げる必要があります。
商業サービスの拠点については、前述のとおり、中心市街地で商業・業務⽤地の整備が進んでおり、合計19.1ha(191,000㎡)の広大な土地に商業施設が進出し、現在は約20%(3.8ha)を残すのみとなっています。
常陸太⽥市の今後の⽅針
市がこれから何に注⼒していくのか。市役所が独⾃で⾏うこともありますが、地域内外の⽅々と連携して⾏うことも多いです。
その際に、スキルがあり、かつ地域への想いを持ったプレイヤーが少ないことも、地域課題の1つです。
ここからは、市総合計画の産業に関する部分からピックアップしてご紹介します。
働く機会の創出
市⺠が必要とする魅⼒ある商業施設や雇⽤が⾒込まれる企業誘致の推進。
農業後継者・新規就農者等を確保するための栽培技術の向上や農業者の所得向上。
新たな働き⽅を⾒据えたテレワーク利⽤環境の整備など。
- 市内就業の拡⼤促進
- UIJターン者等の起業や創業⽀援
- 農業継承の推進等による農業後継者、新規就農者等の確保や育成
- テレワークに対応する環境の整備
- ワーケーション利⽤環境の整備とプロモーション活動の展開
地域特性を活かした農林⽔産業の振興
農林⽔産業の⽣産基盤の整備を進め、農産物の安定した⽣産体制の確⽴や販路拡⼤。
地場産品の付加価値を⾼めるための6次産業化への取組みの更なる強化。
森林環境譲与税を有効に活⽤した林業振興。
- 地場産物の⾼品質化や⽣産拡⼤
- 林業振興と地域産⽊材の利⽤促進
- 6次産業化の推進(加⼯品の研究や開発、商品化への⽀援)
- 道の駅ひたちおおたを活⽤した農産物や加⼯品・地域特産品などの販路拡⼤
地域資源に磨きをかけた観光の振興
地域資源・地域の特性を活かした更なる誘客促進、交流⼈⼝の拡⼤、リピーターの増加につながるようなイベント等の継続した実施・⽀援。
マイクロツーリズムなどの新たな観光施策の推進。
⽂化財の保護と活⽤や情報発信の強化など。
- 県北6市町連携による県北教育旅⾏等の事業の展開
- イベント等による交流⼈⼝の拡⼤及び消費拡⼤
- アウトドアスポーツ等の観光資源の普及及び体験・滞在型観光の推進
- 地域の特性を活かした各種ツーリズムの推進
- 観光施設、飲⾷店等で観光情報等が得られる環境整備の促進
まとめ
3地域で計48社の中⼩企業の経営者に「経営改⾰のための中⻑期的施策の実⾏状況について」ヒアリングをした結果、⽬先の業務に追われ、中⻑期の施策を考えられていない、あるいは着⼿できていない企業が8割ほどあることがわかりました。
「課題の整理や新たな⼿段に着⼿できていない」「現状に対する施策が⾒当たらない」「施策はあるが⾏動ができていない」といった状況ではあるものの、危機感や中⻑期に何かやりたいという意思はあります。
もちろん、すでに着⼿されている・着⼿し始めた経営者もいます。
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