例えば、収益の改善・販路拡⼤・新規事業・⼈事体制の⾒直しなど。
⼤⼩様々な違いはあれど、社内の課題を抱えていらっしゃる地域企業は少なくありません。
その多くは、解消に向けて取り組んでいきたい・将来的には取り組まなければならないとも思われています。
なかなか実⾏できない要因は、それらをできる⼈材やノウハウの不⾜、はたまた、既存の業務が忙しくて取り組み始める時間的な余裕がないことが根本にあると感じています。
⼀⽅で、⾃⾝の経験やスキルを活かして誰かに貢献したい。⼒を試したい。本業とは異なる環境で経験を積んでスキルアップしたい。
そんな熱意のある地域外の、いわば、その分野のプロフェッショナルな知識やスキルを持った⽅々が、副業プロジェクトに参画し活躍されています。
初回に引き続き、副業プロジェクトを実施された(または実施中の)事業者にお話を伺った内容を、複数回に渡って共有していきます。
(同様の内容を動画でも配信します)
地域の企業がどんなプロジェクトを⽴ち上げ、どんな副業⼈材の⽅と、実際にどう進められたのか。
地域企業の皆様にとっても、副業に関⼼のある⼈材の皆様にとってもご参考になれば幸いです。
Contents
今回の舞台
⼤⼦町にある温泉宿「⽉居温泉滝⾒の湯⽩⽊荘」(以後、⽉居温泉)。
約30年前に地域おこしとして⽇帰り温泉から始まり、地域の⽅々で協⼒しながら運営してきたそうです。
『⼩さな規模で始まりましたが、だんだん⼤きくなって現在の状態になっています。
(肌に良い泉質なので)⽪膚病やアトピーなどで来る⼦供さん達が多いんです。
その⼦どもさん達が⼤⼈になってまた来てくれるっていうこと、凄く嬉しく思います。』
そう話すのは、20年もの⻑きにわたり⽉居温泉を⽀えている受⼊れ担当者の柳下さん。
⼤⼦町商⼯会の勧めもあり、副業プロジェクトを始められました。
また、副業として参画された鈴⽊さんは、⽉居温泉の事業を承継し、現在は代表取締役社⻑として活躍されています。
副業プロジェクトの内容や事業承継について、柳下さんと鈴⽊さんにお話を伺いました。
プロジェクトの概要
今回のプロジェクトでは、経営改善として取り組むべき課題を整理し、経費の⾒直しなどによって⾚字を⼤幅に縮⼩されました。
また、プロジェクトを進めるうちに⽉居温泉の⽅々と鈴⽊さんの想いが重なり合っていき、法⼈化および事業を承継することになりました。
プロジェクトを始めた⽬的
■柳下さん:
『未来が⾒えなかったんですよ。』
建屋もだんだんと年季が⼊ってきており、あちこち修理が必要となっている中で、来客数も減少傾向にあったそうです。
■柳下さん:
『それじゃどうしましょうかっていう時、実際に考えたらお先真っ暗という感じで』
皆さんもご存知の通り、コロナ禍で観光業界も⼤きな打撃を受けました。
当時の⽉居温泉は「組合」という組織形態だったため、コロナ関連の給付⾦なども受け取ることができず、⾮常に苦労をされたそうです。
■柳下さん:
『営業ができていても経営ができないんです。
経営の⾯を伸ばしていけたらいいな。⾜踏み状態だけど、⼀歩でも踏み出せたら。』
そんな想いで副業プロジェクトを始められました。
プロジェクトの内容
鈴⽊さんは旅⾏業界と⼈材業界での経験や経営の経験を活かし、⽉居温泉の経営改善に取り組まれていきました。
■鈴⽊さん:
『私がまず始めたのは、経費をどんな感じで使ってるのかというところに着⽬しました。
1つ1つ経費を⾒ていきますと、例えば⾼額なリースや旅館にそぐわないようなアメニティを使っているとか、そういうところが多々⾒受けられましたので、1つ1つ⾒直しをしていきました。落とせるものは落として、契約が解除できるものは解除して。あまり豪華なというか⾼額な経費がかからないような形を⽬指していきました。』
⽉1回のペースで訪問し、どこを直すべきか、どこを削減するかを役員さん達と話し合いながら実⾏されてきたそうです。
■柳下さん:
『最初は外部の若い⽅が来ることに対して少し抵抗もありました。
でも、鈴⽊さんのアドバイスって本当に的確なんですよね。
それで経営が改善され、新しい未来が⾒えてきました。私達の気持ちが違ってきたんですよ。』
経費は⾮常に絞られ、⾚字幅を⼤幅に縮⼩されました。
地域の業者さんとの⻑年の付き合いで固定化された費⽤もあり、契約を⾒直されていったところもあったとのこと。
『1⽇でも⻑く温泉を守ってほしい』
組合⻑や地域の⽅から⾔われた、その想いを叶えるための苦渋の決断もあったことでしょう。
副業⼈材の経験と参画の動機
沢⼭の⽅々からご応募と、それぞれの熱意が感じられる経営改⾰に関する提案書をいただいたそうです。
その中から選ばれた鈴⽊さんは、旅⾏業界からキャリアをスタートし、これまで様々な挑戦をされてきました。
■鈴⽊さん:
『新卒で旅⾏業界に⼊り、旅⾏代理店で約18年間、営業とかですねカウンターセールスもやりましたし添乗も⾏かせていだきました。
旅⾏会社で諸々経験し、その後は⾃⾝で独⽴もいたしました。』
独⽴後はサーズや911などの逆境を越えつつも、なかなか厳しい状況が続いており、⼈材業界に移られたそうです。
■鈴⽊さん:
『当初はエンジニア系の⼈材派遣会社で営業職や新卒採⽤を⾏なっておりました。
その後、医療福祉系の紹介会社等に転職をいたしまして、⼈材業界でも今約10数年経験をしております。』
現在は3年前から独⽴をし、東京で総合的な⼈材紹介の会社を経営されています。
そういったご経験を活かしつつ、キャリアアップも考えて今回のプロジェクトに応募されたそうです。
■鈴⽊さん:
『経営改善のお⼿伝いができる⼈を探しているということで拝⾒しまして、私の旅⾏業界の経験をもとにですね、あと⾃⾝で会社も経営してるものですから、そういったところでお役に⽴てないかなと思って応募させていただきました。
なかなか難しい案件ではあったんですけれども、皆さんのやる気と⼈柄に⼼を打たれまして、頑張ってみようと思ったのがきっかけでした。
あと⼈材業界と⾜して核となる事業がなんか創出できないかなということで。』
とはいえ、当初から事業承継を考えられていたわけではなく、プロジェクト⾃体も承継を前提とする内容ではなかったそうです。
事業承継の経緯
■鈴⽊さん:
『アドバイザーとして当初は⽉1回のペースで通っていたんですけれども、その中で組合⻑さんの⽅から1⽇でも⻑く温泉を守ってほしいという事でお話がありまして。
とはいえ任せる奴がいないんだと⾮常に悩まれていたところが、私にも悩みの種というか課題として凄く残っていました。』
⽉居温泉がある⼤⼦町の⼩⽣瀬地区は⾼齢化が⾮常に⾼く、⼦供がほとんどいない。
そういったことを地域の⽅々と交流を深めていく中で知り、1⽇でも⻑くこの温泉を守り続けていかなければならないという想いが⾮常に強くなっていったそうです。
■鈴⽊さん:
『柳下さんや役員の⽅々と、この旅館をどうやって守っていくのかという話を散々してきました。
私みたいな若輩者ができるのかどうか、旅館を守っていけるのかどうかっていう不安はあったんですけれども、地域の皆さんのためになるならやってみようという事で事業承継を引き受けたという流れです。
できる限り1⽇でも⻑く続けていけるように努⼒をしていきたいなと考えております。』
また、そういった課題感だけでなく、⽉居温泉の⽅々をはじめ地域の皆さんとの交流する中で感じた温かさも承継を引き受けた⼤きな理由だったのでしょう。
代表取締役となった鈴⽊さんが描く、今後の構想に⼤きく反映されています。
■鈴⽊さん:
『私が事業を承継するきっかけにもなったんですが、地域の⽅々が⾮常に温かくて、1⼈1⼈が私に対して声をかけてくださいました。
旅館にいても、『お、今⽇も来てるんだ』みたいな感じで声をかけていただいたりとかですね、皆さんから⾮常に温かく迎えていただいたのを⾮常に嬉しく思っております。』
⽉居温泉の今後の構想
■鈴⽊さん:
『地域の⽅々との交流も⾮常に⼤事だなと思っており、ここの旅館を1つのコミュニティにしたいなと考えております。
例えば集落の⽅が持ち寄ったお野菜を売っていただいたりとか、観光客の⽅と地域の⽅との交流も含めてですね、⾊んな⽅がここに来れば「何かやってるんじゃないか」「何かできるんじゃないか」というところになれるような、明るくて活気のある拠点にしたいなと思っています。
私がやってる地域交流会みたいなものの輪も広がっていったりとか。
柳下さんも賛同してくれまして、⼀⽣懸命に⼿伝ってくれまして、地域交流会も回を重ねるごとに参加者が増えてきております。
町を明るく賑やかにしていきたいなっていうのが私の理想というか希望です。』
■柳下さん:
『未来が⾒えなかった状況から、鈴⽊さんのおかげで希望が持てるようになりました。
今後は若い世代が地域に関わってもらって、温泉をさらに発展させていくことを期待しています。』
地域交流会は⽉に2回ほどの頻度で開催されているそうです。
ちょうど私達が取材に伺った⽇にも開催されていました。
今回は警察の⽅を招いた防犯対策の講習会という少し堅めの内容でしたが、机が⾜りなくなるほど沢⼭の⽅々が参加され、笑顔と笑い声が溢れていたのが凄く印象に残っています。
プロジェクトの感想
■鈴⽊さん:
『私は実家が埼⽟なので、全く⽥舎感が全くありません。
⼤⼦町に来るとですね、第2の故郷というか、おじいちゃん・おばあちゃんの家に帰ってくるような、こう、ホッとする感があります。
なので今は2拠点⽣活ですけれども、今後もずっとこういう形で地域の⽅に貢献していきたいなと考えております。』
■柳下さん:
『鈴⽊さんが温泉を引き継ぐことを決意してくれて、本当に⼼強く思っています。
彼の思いが、⽉居温泉の未来を⽀えてくれています。
副業で地域に関わることで、⽉居温泉だけでなく地域全体が活気を取り戻します。⼀緒に未来を作っていきましょう。』
まとめ
他者の⼒を借りて事業を推進する、実現することは、業務委託・外部発注・アウトソーシングなど、これまでも社会⼀般的に⾏われてきました。
昨今では、副業やスキルシェアといった形で参⼊される⽅々も増え、お互いに可能性が拡がっています。
また、副業やスキルシェアには、⾦銭的な報酬よりも経験的な報酬や地域貢献などを動機とする⽅々が少なくないといった特徴もあります。
企業にとっては、事業の推進や課題の解消など。
副業⼈材にとっては、経験によるスキルアップや地域貢献など。
それぞれの想いを実現し合う⼿段の1つとして副業プロジェクトを検討されてみてはいかがでしょうか?
本記事が、地域企業の皆様にとっても、副業に関⼼のある⼈材の皆様にとってもご参考になれば幸いです。
「茨城県北の人事部」では、地域の仕事情報を発信しています。
最新情報を受け取りたい方は、公式LINEにご登録ください!