【地域の仕事のひと】福祉事業の幅広いニーズに応えるために ~外部人材活用インタビュー~

【地域の仕事のひと】福祉事業の幅広いニーズに応えるために ~外部人材活用インタビュー~ - 茨城県北の人事部

 

「地域の仕事のひと」
地域ではどんな人が、どんな挑戦をしているんだろう?

そんなテーマで今回は、地域で外部人材の活用を進める「株式会社いばらきのケア代表取締役社長 石川剛さん」にお話を伺いました。

人口の少ない地域であるほど
1人1人の仕事が、想いが、相手の喜びや助けに直結する。

知ること、行動に起こすことで、
これまで培われた経験を活かせる機会が地域には沢山ある。

人口減少が続く地域で、どのように外部の人材を活用しているのか。

地域ならではの「仕事とひと」のお話です。

 

 

Contents

事業概要

「祖母が病気になってしまって、そこをきっかけに看護師の学校に行き始めました。看護師として活動していく中で、ケアマネージャーの資格を取ったんですね。そこで在宅支援に強く興味を持って、ケアマネージャーとして独立したのが2011年です」

祖母の力になりたいと介護の勉強を始め、医療業界に転身された石川さん。
その後は看護師として患者さんのケアをしている中で、今以上に一人一人と向き合っていきたいと考え、独立し、奥様の地元である常陸太田市で株式会社いばらきのケアを設立された。

事業概要

【介護事業】
居宅介護支援、デイサービス

【障害事業】
放課後等デイサービス(2施設)、多機能型生活支援(3施設)、多機能型通所支援(2施設)グループホーム、相談支援

【保育事業】
保育園、学童クラブ、多目的スペース

【配食事業】
高齢者向け弁当の製造・配食、オフィス向け弁当の製造・配食

【飲食事業】
小麦の奴隷(パン屋)、横浜家系ラーメン あみ家(ラーメン)

【その他】
直売所、移動販売車、運動教室、移動スーパー、生活困窮者就労訓練、温泉水宅配、開業支援

 

さまざまな事業への挑戦

現在、10を越える事業を13施設で運営し、拡大を続けるいばらきのケア。
母体である福祉事業だけみても、障がいを持つ子供達などの支援に加え、高齢者の介護、保育園の運営など、広範囲の領域に渡り複数の拠点で福祉事業を営まれている。

ひとえに福祉といっても利用される方々の属性が異なり、専門的な知識も違うため、経営の難易度も上がる。
それでも新たな対象やサービスに挑戦してきたのは、何がきっかけとなったのだろうか。

「独立当初に、ケアマネージャーとして介護を必要とする方々やご家族から相談を受けるなか、必要とされていることなどのお話を受けてきたことがきっかけです。いろんなニーズに合わせて、必要な声を聞いて事業を展開してきましたが、本来はここまで大きく展開はしようとは思ってなかったんですよ」

 

 

在宅介護プランや介護事業者との調整などを行う居宅介護支援から始まったいばらきのケアは、相談者からの要望を受けとめ、翌年にはデイサービスや高齢者向けの弁当製造・配食サービスを始めた。

その1年後、現在会社としてウエイトが一番大きい、障がいを持つ子供達向けの支援を展開。
この事業は子供達の成長に合わせて発展し、現在の様々な事業展開に繋がるきっかけにもなった。

 

「最初は学童のような療育施設だけをやっていたのですが、一番最初に預かっていた方のご家族から『高校を卒業するにあたって受け入れてくれる施設がない』という相談を受け、昨年には18歳以上向けのグループホームを開設しました」

※療育施設:障害のある子ども1人1人に合わせた治療・教育を提供する場

 

「障害事業部は、始めた当初の子供達の成長を追いかけている感じです。小学生だった子供達が今18歳で、仕事して工賃っていう形でお金もらって、グループホームに住んでいます」

ある一定の期間だけ支援する。それだけでも、きっと難しい。
子供達の成長に合わせて、小学生向け→中高生向け→18歳以上向けと、新たに事業を拡充していくことでご家族のお悩みに対して答えていく石川さんの姿勢には、1人1人の人生を大切にしたいという想いを感じる。

 

そして、福祉以外での事業展開も、子供達への継続した支援に繋がっている。

「障がいのある方が働く場をいろんな部分で考えてたんです。一般就労が望ましい形ですが、障がいのある方が支援の方なしで働くのは、雇用する側の理解も必要なので簡単ではなく。そういった中で、弊社の方で就労の場を作りました」

 

一つ一つの事業が繋がっていった時、保育園から介護施設、いわば乳幼児から高齢者までという人生をトータルにケアされているような全体像が見えてくる。

「本当にそう感じてますし、そう言われるケースが多いです」

ニーズに応えたい石川さんの想いや子供達の成長に合わせて一緒に成長してきたことが、結果的に多角的な事業展開になっていった。
そこには、地域や職員さんへの想いも含まれていた。

 

地域への想い

行政だから出来ることもあれば、行政だからこそ難しいこともある。
『行政ができないようなことは、我々民間がやらないといけない』という想いも推進力になった。

 

例えば配食サービスでは、1つ380円のお弁当を1軒だけでも届けに行かれている。
移動スーパーは、『商品を手にとって買いたい』という高齢の方の想いを受けて始めた。

地方には、車で移動できないと買い物が困難になる地域が少なくない。

「地域で何を求められているのかっていうのを把握しながらやっていく必要があるのかな。社会資源は、会社として作っていく必要もあるのかな。と、思っています。
とは言っても、やっぱり民間の一事業所だけでは出来ませんので、いろんな業種の方とかと繋がって。常陸太田市には凄く良い物があるので、コラボすることで一緒に地域を盛り上げたり、何か発信ができるんじゃないのかなって思っているんですよ」

 

『小麦の奴隷(パンを製造・販売する事業所)』では、老舗の醤油蔵元とコラボした「本気の塩パン(醤油&ザラメ)」を販売。
12月にオープンした新規事業の『横浜家系ラーメン あみ家』では、老舗酒蔵や若手農家とコラボしたメニューを構想されている。

「一緒に進んでいくというか、伴奏していくっていう形で一人の力ではなく、二馬力三馬力でやれればなっていうのがあって、コラボは結構やっています」

 

職員への想い

「保育園は、福祉業界には若い人達が多いので職員のニーズや必要性で始めました。初めて採用した職員が出産して、なかなか保育園に入れなかったり復帰が難しかったので」

働きたいのに働けない。そんな状況は、本人にとっても企業側にとっても辛い。
常陸太田市で待機児童が話題に上がらないのは、こういった素早い取り組みが背景にあるからなのかもしれない。

 

また、様々な事業への挑戦に対し、職員さんが輝ける形で任せることを心がけているとのこと。

「例えばラーメン屋は、教育現場へ出張に行った職員が、未来予想図を書くといった企画で「ラーメン屋をやりたい」と書いて帰って来たんですね。本人がやりがいを持てるっていうことと、(就労支援の一環で)障がいのある方が働ける場になると思い、任せることにしました」

 

任せるというのは、任される側はもちろん、任せる側も意外と難しい。
後輩や部下がいる方、子育て経験のある方は、きっと心当たりがあるでしょう。
何か工夫されていることはあるのだろうか。

「私が全部やる!ってなると私の会社になってしまう。みんなを信じてというか、みんなの色をつけていただいてる感じですかね。会社としての道筋を立てたうえで勇気を持ってお願いした時に、その方自身で考えて行動することが成長に繋がっていると思っていまして。今まさに私いなくても全然回っていますので、そんな感じでやっています」

 

頼りにされ、自分で考え、行動に移せる。そんな職員さんが多いからこそ、様々な挑戦を続けられるのかもしれない。

 

また、これまで異分野の事業に挑戦される際、外部(副業)の方と協働してプロジェクトを進めることもあった。
どんな方と、どんなプロジェクトをされたのだろうか。

 

副業人材の方との協働

「(就労支援の一環で生産している)ニンニクスプラウトを使ったレトルトカレーを販売しているんですが、そのレトルトカレーを副業人材の方と一緒に開発させていただきました。カレーに携わっているプロの方でしたので期待以上の出来上がりで、その後も周知などに協力していただき、定期的に売れているのは副業人材の方のおかげだと感じています」

なお、ニンニクスプラウトは、市内の若手農家さんに教えていただいたとのこと。
ここでもコラボが生まれていた。

「その他にも別の方とですが、年に1回開催しているインクルーシブ社会の実現に向けたイベントの企画を一緒に作っていただいたこともあります。イベント企画というよりもスポーツ関係が本業の方でしたが、今も継続して実施できています」

 

たくさんの新規事業を立ち上げられている石川さんにとっても、各々の専門分野のプロに初期段階で携わっていただくことは大きなメリットがあった。

「やっぱりスピードがありますね。素人が始める業種はやはり時間がかかるので、副業人材の方に携わっていただくと早いです。短期間でバッて集中して、事業の実現に向けてっていうのは非常に良いなって感じています」

「職員にも変化がありました。期間も限られているので、動きが早くなったり、自ら動いたり相談したり。そういった中で伴走できるので、その辺も良かったです」

 

そんな、職員さんが成長していく姿も、石川さんが事業を進めていく上での喜びの1つ。
これまで職員さんのおかげで利用者様やご家族のニーズを叶えることができた。非常に感謝していると振り返る石川さんは、次の段階に目を向けられている。

これから叶えていきたいこと

「人事評価を年2回やっているのですが、そういうところの構築は正直弱いって感じてます。『上司も見られているよ』っていうのはちょっと意識づけて、360度評価を去年から開始してるんですよ。今は、『こう出来ている』『出来ていない』『どちらでもない』のような項目に丸をつけるタイプで試していますが、評価がうまくリンクしてない感じかなって思っています」

これまでも職員さんにとってのより良い環境づくりを考え続けてきた。
しかし、利用者様やご家族のニーズを叶えるためにスピード感を持ってやらないといけないところもあった。

 

毎年1つは新規事業の立ち上げや新たな施設を開設するなど、事業の展開が駆け足で進んでいく中で、体制がまだまだ構築できてない部分があるとのこと。

現場に携わる職員さん(新卒・中途)だけでなく、より良い仕事環境を共につくるバックオフィス系の人材の必要性も感じられている。

 

「やっぱり職員あってこそ茨城のケアも成り立っているというところは考えていて、利用者様も職員も共に成長していけるよう、みんなが幸せになれるよう、会社としてしっかり足元を見てやっていかないといけない時期なのかなって思っています」

「利用者様や職員に対して会社が提供できることの質を高め、創業20周年を迎える6年後には、誰が聞いても満足できる会社にしていきたいと思っています」

 

まとめ

どんな仕事も、その先には誰かの暮らしに繋がっている。
本記事でご紹介した方々だけでなく、この地域には、それぞれの『誰か』に想いを馳せて挑戦している人達がいます。その想いや挑戦に共感し、共に歩みを進める人達がいます。

関わり方も、チームの中から(入社など)or 外から(副業など)、短期間や長期間など、ケースやフェーズによって様々あります。

地域での協働が、皆さんご自身にとって、地域で挑戦している方々にとって、それぞれの想いを叶え合う機会となれば幸いです。

 

 

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