「地域の仕事のひと」
地域ではどんな人が、どんな挑戦をしているんだろう?
そんなテーマで今回は、副業人材の活用を進める「一般社団法人まちのこ団 代表理事 増田大和さん」にお話を伺いました。
人口の少ない地域であるほど1人1人の仕事が、想いが、相手の喜びや助けに直結する。知ること、行動に起こすことで、これまで培われた経験を活かせる機会が地域には沢山ある。
地域ならではの「仕事とひと」のお話です。
Contents
事業概要
2020年に創業し、2022年に法人化。2024年に日立市へ事務所を移転。
Mission:子どもの“原体験”を豊かにする
Vision :すべての子どもや若者が自信を持って生きる社会をデザインする
Value :アソビニケーション(あそび体験×コミュニケーション×まちづくり)
事業を始めたきっかけ
「きっかけがありすぎて、どこにフォーカスを置けばいいか難しいんですけど、移動式遊び場事業に関しては東日本大震災がきっかけです」
被災地へ支援に行かれた時、繋がりや絆の重要性を肌で感じた増田さんは、防災や街づくりといった分野を意識するように。
その後、移動式遊び場を日本で初めて導入したNPO法人にボランティアとして参加し、あそびの魅力を知った。
「遊び場って子供だけの場じゃなかったんですよね。親御さんや地域の通りすがりの人とかが一緒に遊んだりしていて。田舎のような人と人との繋がりが希薄な印象の東京なのに、道で遊んでる人もいるし。
なんで?みたいなところにすごい可能性を感じて、遊びって世代超えるんだなぁと実感しました」
そういった学生時代の経験や出会い、海外留学をした際にあそびによって言語を超えたコミュニケーションができた経験が、数年の月日を経て、2020年の創業に繋がった。
こちらのnoteには、まちのこ団を始めたきっかけが詳細に綴られている。
現在は、どんな取り組みをされているのだろうか。
事業内容①コミュニティプレイバス-移動式あそび場-事業
「人と出会うきっかけとして世界一ハードルの低いツールが、あそびだと思っています」
車に巨大なジェンガなど数十種類のあそび素材や道具、仕掛けを積み込み、屋内外を問わずどこへでも出向いてあそび場・居場所を作り出すこの事業は、まちのこ団の主軸になっている。
遊んでいい雰囲気がないと遊具があるだけになってしまい、あそぶことに直接繋がらないこともあるんですね」
そのために、プレイワーカーという専門人材が、あそびの環境をつくっているのも特徴の1つ。
「あそびの世界って色んな人と出会えたり、多様な経験も積めます。いろんな困難にぶち当たり、思い通りにいかないことも当たり前にある。あそび場では、そんな機会をあえて作っています」
リピート率が高く、保護者へのアンケート結果では「私たち家族が出かけるための基準になってます。」
など、満足度の高さが伺えるコメントをいただいているとのこと。
「一緒に遊べる共通体験を得られる。身近にある。っていうのが凄く良かったみたいです。僕らもそれを意識してるんですけど、ここが伝わっているのが凄く嬉しいですね」
あそび場づくりに出向くだけでなく、地域内での繋がりづくりにも目を向け、拠点での事業も行われている。
事業内容②拠点式場づくり-まちのこベース-事業
2021年から始めたこの事業は、地域との繋がりが高く評価され、日本放課後AWARD2024にて『地域賞』と『こども参画賞』の2部門で受賞された。
「まちのこベースに来る子ども達と地域の方との距離が近くなって顔の見える関係の構築が進み、お互いにとってその場所や地域が、過ごしやすくなっていく。そのようなお手伝いをしていきたいと活動しています」
自宅や学校だけでない、身近にあるもう一つの居場所。
自宅や学校では得られない経験や出会いがある場所として、気軽にあそびに来れる場所を目指している。
「例えば、逃げてこれる場だし、愚痴がはける。心の拠り所の一つになれるような場所になればいいかなと思って思っています」
この事業で出会い、今は中学生になった子ども達も頻繁に遊びに来るという。
「つい最近、その子達に『親の前と友達の前と学校にいる自分は、全部違う自分じゃん。同じ自分だけど全部違う自分だよね。でも、ここでは何でも良い。』って言われたのが、すごい嬉しかったですね。そういうことがサードプレイスの意味合いだったりもするし、そこから気づきとかも得られると思います」
移動型、拠点型だけでなく、地域と連携した事業もされている。
事業内容③企画運営まちづくり事業
「移動式と拠点式の掛け算のような企画もありますし、まちのこ団や僕ができることをより広く社会に提供しています」
例えば、日立市と協働で開催したLiving Street Hitachiというイベント。
JR日立駅前にある商店街の道路に、こたつやハンモック、様々な遊び道具を並べ、来場者それぞれが思い思いに過ごせる居心地のいい空間をつくり出した。
キッチンカーや物販の出店者なども集まり、会場となった商店街の店主からは『こんなににぎわいのある商店街を見たのは本当に久しぶりで、嬉しい』などの声もあがった。
その他にも、多数のイベントや社会福祉協議会とタイアップした子ども食堂の開催、防災の講師なども務める。
そんな多様な取り組みを行うまちのこ団には、どんな方々が関わっているのだろうか。
事業に関わる人達
「ボランティアのメンバー登録していただいた方は、5年間の累計で550名を超えているので、なかなかに多い人数が関わってくれています」
増田さんの取り組みは、想いに共感してボランティアとして関わる方が多く、年齢も高校生〜40代と幅広い。
ボランティアがきっかけで自分の居場所に出会い、巣立った人達もいる。
「いろんな方々がまちのこ団を通過して出会いを作れたり、学びがあったりというのが見え始めてきたんだと思いますね。自分の居場所を見つけられたんだな。子どもも居場所が大事ですけど、大人にもやっぱり大事で」
一方で、コアに関わり続けている団員(メンバー)も複数いる。
社会人や学生の9名がコアに関わっており、年齢も職業もさまざま。
「本業は土木設計コンサル、リクルート、会計、経営者など子ども関係の仕事じゃない人がほとんど。副団長が公園にあるような遊具のメーカーに最近転職して勤めているぐらいです。ちょっと前までは高校生もいました。大学生もインターンで関わってくれています」
それぞれの役割は、スキルよりも各々がやりがいを持てる内容で協働されている。
「例えば、自分でもコミュニティを作りたい方には、コミュニティのマネージャーを。先生になりたいっていう夢があるインターン生には、まちのこベースを中心に学校では出会えない子供達の姿みたいなのを見て経験を積んでもらってます」
この9名のうち3名との協働は、まちのこ団の副業プロジェクトに応募されたことがきっかけだった。
副業人材との協働
1人目は、営業のコンサルタントを自営している方。
より多くの場所で子ども達のあそび場をつくり、地域のコミュニティになる場所を広げることを持続的にしていく為、企画や営業の強化を共に行なっている。
「彼自身も子育て中のパパっていうのも大きいと思うんですけども、子ども達の環境や原体験作りをしていくことに対する重要性や可能性をすごい感じてくださっていて」
まちのこ団の事業に深く共感されており、高い熱量を持った行動が結果に結びついている。
「本業で自治体とのやり取りをされている中で、隙あればまちのこ団を紹介してますって言ってくれてるんですよ。実際に埼玉県でのご依頼に繋がりました。最近も埼玉県庁に行ったり議員さんにお会いする場を繋いでくださったり」
案件獲得や紹介など営業支援だけでなく、営業技術も継承していただいているとのこと。
2人目は、企画会社を自営している方。
「彼もまちのこ団の理念にすごい共感してくれて、すごい熱量のある方です。プロバスケットチームとの営業の機会を作ってくれたり、話を進めてくださっています」
まちのこベースを地元で作りたいという想いも持った方とのこと。
「まちのこベース福井の実現を通じて、後々はフランチャイザーとしても展開できたらいいなって思っています」
3人目は、会計の会社に勤めながら、ご自身のスキルや知見を活かした新しいことを探されている過程で、まちのこ団を知った方。
「まちのこ団の事をもっと知っていただく為に、まちのこラジオの制作や運営をしてくださっています。まちのこ団には、チャレンジするとか、やりたいことを実現するためのプラットフォームとしての機能があるし、そうでありたいっていう想いがあって。人となりや想いが素敵な彼とチャレンジしています」
副業人材の方々も含め、各団員の役割は自由度が高い。
それ故の難しさを増田さんは、課題に感じられている。
抱えている課題
「すごく人に恵まれてるけど、可能性の最大化ができてないなと凄く思います。「これだけやってね」っていう分かりやすい業務委託じゃないので生じていることだと思います」
同じ視点に立って活動するために、各自の動きや目標など進捗の全体像を共有する月例ミーティングを実施。
なお、基本的に各自が取り組む内容や目標は、各々が決めて主体的に行動されている。
「団員は本当にスキルもあるし、賢い方々ですし、魅力があるので、まだまだ引き出せていない感じがしますね。発揮できる場を僕が整えていければいいなと思ってます」
各々の力を活かしきること。相乗効果を生み出すこと。
これはマネジメント業務に関わる多くの方々にとって、課題に感じることの1つ。
増田さんは、どう解消していこうと考えているのだろうか。
「もっとコミュニケーションを取るべきだと思っています。積極的に仕事を振るとか、お願いするとかじゃなく、彼ら彼女らが何を考えているのか、何を求めているのかっていうのを、1on1などでもう少し頻繁に、定期的にやっていけたらいいなと思っていますね」
いわゆるピラミッド型の組織でなく、フラットなまちのこ団。
お互いをより理解し合うための対話を通じ、まちのこ団の想いと各々の将来に向けた挑戦を掛け合わせ、互いに成長していくことを目指されている。
組織外の部分については、販路拡大について課題に感じられている。
「あそび場を社会インフラにしたいと思っているんですね。それが子育てのしやすさや生きやすさに繋がっていくと思うし、自分を知ることや自分の将来を見つけることにも繋がってくる。っていうのを目指して活動していきます」
その為に、2024年度から地域企業と協働する『まちのこ団パートナーシップ制度』を創設した。
副業人材の方と共に企業訪問などをしているが、まだまだ力が足りない状態とのこと。
ご自身のスキルを磨くことと同時進行で、新たに協働していただける副業などの人材の方の募集も検討されている。
団員の皆さんと協働し、直近では、どんな構想をされているのだろうか。
今後の挑戦
「(パートナーシップによって、)まちのこ団の強みとパートナーさん達の強みを掛け算して、価値をどんどん生んでいくスキームを作っていきたいと思っています。それをまちのこ団モデルとして全国に広めていきたいです」
パートナーになられた地域企業は複数おり、すでに協働プロジェクトが進んでいる。
「茨城県産の木材の活用、自然素材に触れられる機会、鉄工所さんが作ってくれた(オリジナルの)遊具などコンテンツとしての地域性や、いろんな強みを活かした遊べるプレイスメイキングっていうのを確立していきたいなって想いとしてはありますね」
プレイスメイキングとは、公共のスペースやコミュニティなどの場所を変えて、より機能的で魅力的な、利用する人々を引き付ける場所にすること。
「真似ができなきゃいけないと思うので、必ず模倣ができる、再現性があるっていう形にしていくっていうのが、まちのこ団の目指している形です。まちのこ団のモデルをしっかり確立して横展開していきたいです」
まとめ
どんな仕事も、その先には誰かの暮らしに繋がっている。
本記事でご紹介した方々だけでなく、この地域には、それぞれの「誰か」に想いを馳せて挑戦している人達がいます。その想いや挑戦に共感し、共に歩みを進める人達がいます。
関わり方も、チームの中から(入社など)or 外から(副業など)、短期間や⻑期間など、ケース やフェーズによって様々あります。
地域での協働が、皆さんご自身にとって、地域で挑戦している方々にとって、それぞれの想いを 叶え合う機会となれば幸いです。
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