「地域の仕事のひと」
地域ではどんな人が、どんな挑戦をしているんだろう?
そんなテーマで今回は、地域で外部人材の活用を進める
「株式会社八千代商事 取締役副社長 福地美喜さん。(以後、八千代商事および美喜さんと記載)」にお話を伺いました。
人口の少ない地域であるほど
1人1人の仕事が、想いが、相手の喜びや助けに直結する。
知ること、行動に起こすことで、
これまで培われた経験を活かせる機会が地域には沢山ある。
人口減少が続く地域で、どのように外部の人材を活用しているのか。
地域ならではの「仕事とひと」のお話です。
Contents
会社・事業概要
茨城県日立市にて1966年2月に現代表の祖父が創業。
現在は、福地秀太郎氏が3代目の代表を務め、住宅資材の問屋及び木材市場で仕入れた商材を大手ハウスメーカーや工務店向けに木材全般と住宅資材(床材・断熱材・建具・キッチン・風呂・トイレ)を販売している。
八千代商事での役割
美喜さんは代表との結婚を機に日立市に移住し、2006年から八千代商事に従事。
4人の子育てをしながら、経理事務などをされていた。
「会社の次の事業を見据えてみた時に、既存事業だけではなく他の事業も展開していく必要性があると考え、3年ほど前から新規事業の開拓も担当しています」
美喜さんの取り組み
会社名は知っているが、どんな事業をしているのか、よく分からない。
そういった会社は、皆さんのご近所にもあるだろう。
BtoBの事業であるが故に当初の八千代商事も同様で、地域や周りの方々との関係を深めていきたいという想いがあった。
まずは新規事業を模索するために社外へ飛び出し、様々な人たちと繋がっていく中で、あることに気づいた。
「『新しい事業をやりたいんだけど、次の一手が考えられない。どうしたらいいんだろう?』っていう中小企業の経営者が地域に沢山いらっしゃる。こういった異業種の人達とのコラボによって、地場に新しい産業を生み出せていけるんじゃないのかなと感じました。八千代商事の課題が他の中小企業の悩みと同じだと知り、共感して応援してくださる方々が沢山いました」
行動を起こしていく中で、仲間や依頼も増えてきた。
「私達はものづくりの会社ではないのですが、最近『木材でこういうのを作りたい』というご依頼を受けることが多くなりました。その時に異業種の方に相談して、『こんな風にしてみたら?』ってアドバイスをいただいたり、『あ、ちょっとこれやってあげるよ』って金属の部分を加工していただいたりと、近隣の製造業の方との関わりが以前より増えました」
美喜さんは事業者だけでなく、行政や地域の人達も繋いでいくことを考えている。
「それぞれ様々な課題を持っていると思うんですけれど、それらを繋げる会社は地域の中に少ないと思っています。弊社としては、課題感を持つ人たち同士をつなげるパイプ役の役割ができたらなと思っています。」
八千代商事では創業当時から使っていた本社の老朽化に伴い、昨年、900㎡の敷地にある本社の解体工事を行った。
そして今春から新たな社屋を建設し、地域の人が気軽に集まれる、地域の中小企業が交流できる活気のある場『八千代の森』を1年半かけて構想してきた。
「茨城県産ヒノキをふんだんに使った木造建築で、暖かさや温もりなどといった木の魅力をもっと多くの人に知ってもらい、地域の資源の地産地消や林業・木材業の活性化にも貢献したいと考えています」
また、新社屋に関するプロジェクトには、副業人材の方も参画している。
副業プロジェクト
新社屋に地域の人が気軽に集まり、茨城県産の木材と触れ合うことができる場で、イベントを企画したり活気ある場も兼ね備えたものにするためには、広い視野を持ち優秀な人材が不可欠であると考えた八千代商事。
共にプロジェクトを加速させ、地域に根差した場づくりをしたいと思い、副業人材の方を募集した。
「木材を長年扱っている会社なので、木材がもっと活用されるようにしていきたいです。そのPRも兼ねて、新社屋に設置する茨城県産の木材を使ったプロダクト製作にお力をいただいています」
どんなプロダクトを製作するか、コーディネーターも交えてそれぞれのアイデアを出し合いながらプロジェクトを進めているとのこと。
「地域の人たちに親しんでもらえるような施設を目指していますが、同地で法人向けの事業を70年もの間営んできているので、認知してもらえたり関係を深めていくのは少し時間がかかると思っているんです。イベントやワークショップも積極的に実施していこうと思っているので、駐車場から建物までのアプローチの部分にサインとなるようなものを地域の木材を使って作ろうと、プロトタイプの製作をしています」
新社屋の1階や広場は、イベントなど地域の方々が交流する場所として活用。
木材の加工機械などを導入する予定の『工房ラボ』では、地域の異業種の方々とプロダクトを開発する実験の場としての活用も構想されている。
また、上記の方とは別に、コンサルティング経験のある方も参画されている。
「私自身は新規事業を色々とやっているのですが、子育て期間が長く、プロジェクトマネジャーの経験が足りないのでアドバイスをいただいています」
副業人材の方々が参画されることで、プロジェクト以外にも変化があった。
「業種、バックグラウンドがまるで違うと考え方も全然違うので、本当に大きな刺激になりました。やっぱり業種それぞれの特徴や文化があるじゃないですか。特に建築業って比較的まだ保守的で古い業界なので、副業人材の方とのディスカッションを通じて代表も私も、いろんな部分で価値観が随分変わった気がします」
プロであるが故に、固定概念が生まれることがある。
副業人材の方々と関わったことで物の見方が変わったことが沢山あり、刺激を受けた。
「正直、私達にとっては木の魅力、例えば木材が置いてある林場(りんば)の匂いに慣れてしまって気づきにくいのですが、木の香りがいいとか、木のぬくもりが好きという方も結構いらっしゃるんだなっていうのも分かりました。木の魅力というものを、もっと多くの方々にPRできるんじゃないかなっていう気づきになりました。」
(※林場とは、木材などを立てかけて保管する場所)
異なる考え方や価値観に触れることで新たな気づきが生まれ、柔軟性も高まり、以前よりも面白い発想が湧いている。
副業プロジェクトを通じて、そんな副産物も享受されていた。
これから叶えていきたいこと
「新社屋を地域に開かれた施設にしていく中で、地域の女性たちを積極的に雇用し、女性たちが輝けるような職場を作っていきたいです」
その想いは、美喜さん自身の経験や出会ってきた女性たちの環境が起因している。
「結婚して子育てすると、落ち着いた時に新たに働こうと思っても採用してくれる企業さんが少ない。今まで輝かしいキャリアとかをお持ちでも、結婚を機に退職して地方へ移住すると、移住先ではそのキャリアを活かせず、全く異なるお仕事に就いている子育てママも沢山います。活躍できるのに埋もれている、そして、もったいない女性たちが多くいらっしゃるなと感じていました」
これまでもパートタイマーとして地域の女性たちを採用されてきたが、旧社屋では設備も古く、女性たちが快適に働ける職場づくりまで至ることは難しかったとのこと。
美喜さんが新規事業に取り組むのは、地域に対する想いと、女性たちと一緒に地域活性を目指していきたいという強い想いが根底にある。
「今後は、自分で考えて行動しないといけない業務も増えてくると思いますし、自分たちの仕事を通じて地域に貢献したいという意欲的な女性たちも沢山いらっしゃると思っています。地域の女性たちを積極的に雇用して、ご自身の能力や強みを発揮して生き生きと働けるような職場を作っていきたいです」
まとめ
どんな仕事も、その先には誰かの暮らしに繋がっている。
本記事でご紹介した方々だけでなく、この地域には、それぞれの「誰か」に想いを馳せて挑戦している人達がいます。その想いや挑戦に共感し、共に歩みを進める人達がいます。
関わり方も、チームの中から(入社など)or 外から(副業など)、短期間や長期間など、ケースやフェーズによって様々あります。
地域での協働が、皆さんご自身にとって、地域で挑戦している方々にとって、それぞれの想いを叶え合う機会となれば幸いです。
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