今年度(令和6年度)から始まった「地域活性化起業人(副業型)」という総務省の制度をご存知でしょうか?
平成26年度から導入された「地域活性化起業人」の対象に、社員個人の副業型も加えられました。
その背景には、企業の副業解禁や、企業で働く方々が個人として「自らのスキルを社会貢献に活かしたい」というニーズの増加があるそうです。
そんなスタートしたばかりの「地域活性化起業人(副業型)」をご紹介します。
Contents
地域活性化起業人とは
三大都市圏にある企業で働く社員の方が、地方自治体でノウハウや知見を活かして、地域課題の解消や地域活性化を図る取組です。
令和5年度は過去最高の水準で、「330社の企業」から「779名の地域活性化起業人」が、「449の地方自治体等」に派遣されました。
観光振興や自治体のDX、地域産品の開発など様々な分野で活躍されているそうです。
これまでは企業から派遣されない限り、どれだけ望んでいても地域活性化起業人として活動することが出来なかったのですが、今年度からは、企業に所属する個人が副業として、ご自身の意思で手を挙げることができるようになりました。
一般的になってきた副業と大きく違うポイントは、関わる対象が市町村などの地方自治体であること。
地域活性化起業人(副業型)として自治体と協働するには、相手とのマッチングはもちろんですが、制度上の要件もあります。
地域活性化起業人(副業型)の要件
(1)個人と自治体が協定を締結すること
3大都市圏内にある企業などに勤務する方と、圏内に本社機能がある企業等で圏外に勤務する方が対象です。
後者は、支社などで勤務されている方などが考えられます。
しかし、受入自治体の区域に勤務されている方は、残念ながら対象外となります。
※三大都市圏には、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、愛知県、三重県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県の11つが含まれます。
(2)月4日以上かつ月20時間以上の勤務に相当する業務を行うこと
月に1日以上は、受入れ自治体に滞在する必要があります。
(3)6ヶ月〜3年の間、継続して受入自治体の業務に従事すること
(4)地域活性化や定住促進、地方圏への人の流れや関係人口の創出・拡大を目指して地域独自の魅力や価値の向上、安心・安全につながる業務に従事すること
上記の要件に全て該当する必要はありますが、地方創生やご自身のスキルアップに関心がある方にとって、挑戦するチャンスが拡大したことになります。
なお、同一の人物が地域活性化起業人として同時期に派遣される、または、副業することができる市町村は1のみなのでご注意ください。
また、勤務する企業などの就業規則(特に副業に関する規定)の確認を経て、地域活性化起業人(副業型)として活動する旨を事前に伝え、副業形態などの承諾を得ることはとても大切です。
組織や職種によっては、副業で得た経験や人脈が、スキルアップだけでなく昇進などにも繋がることがあります。
では、実際にどんな自治体が、どんな待遇で、どんな募集をされているのか。
総務省より公表されている、地域活性化起業人(副業型)を募集している自治体のリストから一部抜粋してご紹介します。
受入れ自治体による募集内容
令和6年11月1日時点では、8県10自治体が募集されています。
従事する時間は、月4日以上かつ月20時間以上の勤務で、月1回の現地勤務が必須。
想定報酬は、月額で約5万円〜8万円とされてる自治体が多いです。
これは、制度の要件と国が地方自治体に支援する上限額(報償費等は100万円/人+旅費は100万円/人)から設定されているのでしょう。
あえて言い換えると、従事する時間は最低限、報酬は最上限といった人材の方への配慮が汲み取れます。
業務内容は「DXの推進」「移住定住施策など地域振興」「再生可能エネルギーの導入など気候変動に関すること」「公共交通に関する事業の企画立案」など各自治体によってさまざま。
例えば山形市では、下記の『首長の思い』をもとに、広報業務に関して5名の方を募集されています。
『将来的に、広報課内に専門人材からなるクリエイティブユニットをつくることを想定しており、専門人材のアドバイスを受けながら、職員も一緒に議論していくことで、市役所全体の広報マインドの醸成を図っていきたいと考えています。』
①市報や市公式ホームページ、SNSでの情報発信等の広報全体の統一感を持たせるための全体統括(クリエイティブディレクター)
②市報の特集記事や市公式ホームページに掲載するページをデザイン(グラフィックデザイナー)
③市公式ホームページに掲載するページをデザインや市公式ホームページの機能追加のアドバイス(Webデザイナー)
④市報の特集記事や市公式ホームページに掲載するページのライティング(ライター)
⑤職員に対して広報研修やフォローアップ
それぞれの専門スキルを活かし、同じ立ち位置の方々とチームを組んで業務を進められることは、専門分野だけでなく、広範囲の知識や経験、人脈を得られる可能性を秘めています。
想定されている報酬は、それぞれ月額8万円(税込み)に加え、現地での勤務時の旅費。
月1回の現地での勤務以外は、オンラインで業務を進めることもできます。
(月4回勤務かつ月20時間以上)
その他、業務を特定してしない自治体も2つあり、自ら提案することでご自身の経験やスキルによりマッチした業務を進められる可能性もあります。
例えば北海道の厚真町では、力を入れている業務を示しつつも業務を特定しない旨が記されており(下記に全文を記載)、『新しいことへのチャレンジ意欲がある方』といった方との協働を求められています。
従事する時間も、(記載ミスでなければ)月1度の現地勤務と、かなり柔軟です。
『特に業務を特定せず、厚真町の自然豊かなフィールドを活かす取り組みや地域課題の解決など幅広い業務で募集していますが、現在、ゼロカーボン、DX、庁舎の建設、関係人口創出等の分野に力を入れています。業務内容については、ご相談ください。
※その他派遣元企業の町内での新規事業立ち上げ等ご相談ください。』
なお、茨城県内では、令和6年10月に県内初となる地域活性化起業人(副業型)が着任されました。
ミッションは、「地域活力推進プロデューサー」として、関係人口や新規就農者の増加により、農業を始めとした町内産業の持続的な発展を目指すこと。
ITシステムの設計・開発に従事されてきた方で、今後もIT企業での勤務を継続しながらリモートワーク等でプロジェクトを推進していくそうです。
また、地域活性化起業人とは異なりますが、茨城県は、県内企業と地域活性化に挑む「副業協力隊(“企業連携型”地域おこし協力隊)」を令和5年に導入されました。(以後、副業協力隊と表記)
副業協力隊とは?
こちらは、総務省の地域おこし協力隊という制度を活用した取り組みです。
隊員と県内企業が協働することによって、地域の課題解決や活性化に資する事業が創出されることを目的とされています。
主なミッションは下記の2つ。
・受入れ企業と協働して、地域における新たな事業の創出や課題解決に資する「地域活性化プロジェクト」に取り組むこと。
・隊員としての活動(県内企業との協働、茨城での副業ライフの様子)を、SNS等を活用して県内外へ発信すること。
一般的な副業と大きく異なるのは、「茨城県外から受入れ企業の所在地域に住民票を異動する方」が対象になること。
地域おこし協力隊という制度を活用しているので、お住まいの自治体の規模によっては対象外となる場合もありますが、2拠点居住でも参画が可能です。
また、副業は一般的に「個人と企業等の契約」となりますが、こちらは「茨城県知事が県外の人材を副業協力隊として委嘱し、挑戦に意欲的な県内企業に派遣」という形式になります。
従事する時間も「週の半分(20時間)程度」と定められており、月額の報酬 233,300円に加え、活動経費(上限額 83,300円×活動月数(年額) )が県から支払われます。
※活動経費の使途には制限がありますが、任期中の住居に係る家賃なども対象。
令和5年度は公募を経て2社の受入れ企業が決まり、「水辺の賑わい拠点づくりのプロジェクトマネージャー」と「地域中小企業が交流できる場を一緒に創りあげる仲間」を募集されました。
副業への意欲の高まりから、マッチングのプラットフォームなどの充実化だけでなく、既存の制度自体にも変化が出てきています。
まとめ
副業人材の方との協働という手法をまだ認知されていない地域の企業や、興味はあるけれど時間的なリソースなど様々な事情で取り掛かれていない企業も少なくありません。
そういった側面を鑑みると、今後も副業プロジェクトが増えていく可能性は大きいでしょう。
出会いはタイミングに大きく左右されるもの。
ご自身の経験やスキルを活かしたいプロジェクトが現時点では見つからなくとも、定期的な情報収集などでチャンスを掴み取っていただけますと幸いです。
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